システムやWebアプリケーションは、大きくフロントエンドとバックエンドに分けられます。フロントエンドは画面などユーザーに見える部分、バックエンドはユーザーに見えない部分です。
それぞれの開発を担当するエンジニアを、フロントエンドエンジニア・バックエンドエンジニアと呼びます。
この記事では、フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアの一般的な仕事内容や必要なスキルを解説しています。それぞれの違いを知りたい方や、自分の適性に合った仕事を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
フロントエンドとバックエンドの定義
システムやWebアプリケーションは、大きくフロントエンドとバックエンドに分けられます。
フロントエンドとはシステムを構成する要素のうち「ユーザーの目に見える部分」です。例えば、マウスで操作する画面や、選択ボタンが表示されている部分をさします。
バックエンドはシステムを構成する要素のうち「ユーザーに見えない部分」です。例えばサーバーやデータベースなどが該当します。フロントエンドでユーザーが入力した情報を受け取って、データを格納したり、後続の処理に連携したりするのがバックエンドの役目です。
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアの違い
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアはその名の通り、フロントエンド・バックエンドを開発するエンジニアです。ここでは、それぞれの仕事の違いを紹介します。
フロントエンドエンジニアとは
フロントエンドエンジニアは、フロントエンド部分、つまりユーザーに見える部分全てを正しく実装するのが仕事です。
フロントエンドエンジニアは、システムやアプリケーションを使うユーザーが操作しやすいように開発しなければなりません。システムの機能にとどまらず、クライアントと見た目のデザイン性や画面の使いやすさを話し合って調整することもあるでしょう。
バックエンドエンジニアとは
バックエンドエンジニアは、主にサーバーまわりのシステム構築を担当します。
クライアントの要望を実現するためには、「データベースの構成はどうするのか」「どのような処理をサーバーで実装するのか」といったことを検討しなければなりません。多くのサーバーはデータベースとつながっているため、データベースの容量を決めたり構築したりするのもバックエンドエンジニアの担当範囲です。
プログラミング言語ではありませんが、サーバーやネットワーク、OS、データベース、Webサーバーなどのインフラやミドルウェアもバックエンドで必要な知識範囲です。
バックエンドで使うJavaやC#などの言語を扱うプログラマーをバックエンドエンジニアと呼びますが、プロジェクトや状況によってインフラエンジニア、サーバーエンジニアもバックエンドエンジニアと呼んでいるシーンもあります。
■フルスタックエンジニア
フロントエンドからバックエンドまで全て行うエンジニアの人をフルスタックエンジニアと呼びます。小さな会社や小さなプロジェクトなどでは明確に役割が分かれておらず一人で全てこなしているエンジニアもいます。
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアに必要なスキル
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニア、それぞれに求められるスキルはプロジェクトによって異なります。また、現場によっては両者を明確に分けず、両方を担当する場合もあるでしょう。
ここでは、フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアそれぞれに、一般的に求められるスキルを紹介します。
フロントエンドエンジニアに必要なスキル
フロントエンドエンジニアに求められるスキルは、以下の通りです。
■フロントエンドに必要なスキル
- HTML
- CSS
- JavaScript
- デザインの知識
- WordPressなどのソフトウェアの知識
- フレームワークやライブラリ、PHPなど
フロントエンドエンジニアは、ウェブページを作るためにHTMLやCSS、JavaScriptの知識が欠かせません。WordPressのカスタマイズを行えるようPHPの知識を持っておくと、さらに業務の幅が広がるでしょう。
フロントエンド開発では、BootstrapやVue.jsなどのフレームワーク(言語に合わせた枠組み)を使うケースも多くあります。
プロジェクトによってはフロントエンドエンジニアがデザインを担当する可能性があるかもしれません。その場合は、PhotoshopやIllustratorなどのデザインツールを使えることが求められるでしょう。
バックエンドエンジニアに必要なスキル
バックエンドエンジニアに求められるスキルは、以下の通りです。
■バックエンドで必要なスキル
- プログラミング言語(PHP、Java、C++ / C#、Ruby、Pythonなど)やフレームワークの知識
- サーバー、ネットワークなどのインフラ技術の知識
- OSやデータベース、Webサーバーなどミドルウェアの知識
- バージョン管理ツール(Githubなど)の知識
使用するプログラミング言語はプロジェクトによって異なりますが、よく使われるのはPHPやJava、C++・Rubyなどです。使用する言語に合わせてフレームワークを利用する場合も多いです(例. PHPであればLaravel、Cake PHPなど)。
また、最近のWebアプリではデータベースと連携するものがほとんどですので、SQLの基本知識はほぼ必須です。加えて、サーバーやネットワークの基礎知識も求められます。
他にも、テスト工程でエラーが発生するたびにプログラムを修正・更新するので、プログラムのバージョン管理を徹底する必要があります。GitHubなどのバージョン管理ツールで管理することが多いです。
必要なスキルが多いように見えるかもしれませんが、全てを完璧にマスターすることはベテランでも困難です。新卒や第二新卒であれば、多くの会社では研修や現場での実践を通して、現場でよく使う技術を中心に身に付けていくことが一般的です。
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアのつらいところ
フロントエンドエンジニア・バックエンドエンジニアには、それぞれ違った大変さがあります。ここでは、それぞれの仕事において「つらい」と言われやすい点を紹介します。
フロントエンドエンジニアのつらいところ
フロントエンドエンジニアのつらいところは、以下の点です。
他業務からの影響を受けやすい
フロントエンド開発の作業が終わりかかっている頃に、クライアントやデザイナーからの変更要望で作業をやり直すことがよくあります。
フロントエンドエンジニアに関わらず、一般的なシステム開発はエラーが発生したりクライアントとの認識齟齬があったりすると修正を行います。そのため、変更要望があることはフロントエンドエンジニアに限った話ではありません。
しかし、フロントエンドエンジニアはユーザーの目に見える部分を担当するため、クライアントが開発工程の後半でシステムが動き始めたのを見て「思っていたのと違う」と思うケースが少なくありません。ユーザーの目に見える部分だからこそ、クライアントがこだわりやすく、変更依頼が発生しやすい範囲ともいえるでしょう。
Webデザイナーと兼任になる場合がある
フロントエンドエンジニアは、Webデザイナーの仕事と近い側面があるため、プロジェクトによってはデザイナーを兼任するケースがあるかもしれません。
エンジニアのみならず、Webデザイナーとしての仕事も増えると、求められるスキルも増えます。異なる種類の仕事をこなすことに疲弊する可能性もあるでしょう。
バックエンドエンジニアのつらいところ
バックエンドエンジニアのつらいところは、以下の点です。
ミスで重大なシステム障害が発生する
バックエンドシステムは、システム全体のベースとなる部分であるため、開発作業においてミスが許されない責任重大の仕事です。
もちろんフロントエンド側でもミスすれば画面崩れや特定画面が動かないなど問題になりますが、データベースなどと連携するバックエンド側では、問題があるとシステム全体が使えなくなる・顧客データ流出、データがおかしくなるなどの可能性が高くなり、より重大なトラブルにつながりやすくなります。
ニュースで話題になるシステム障害は、バックエンド部分に問題があるケースが多いです。そのため、バックエンドエンジニアは神経がすり減りやすい仕事が多いといえるかもしれません。
ネットショップを例に挙げると、1回買い物しただけなのに2重で購入された、別のユーザーの購入履歴が見えた、ショップ機能が全く動かないなどは主にバックエンド側のバグや障害になります。
緊急対応や夜間対応を求められる場合がある
バックエンドは、緊急対応や夜間対応を求められるケースが多くあります。
日中はユーザーがシステムを使っているため、システムの切り替えや導入は夜間に実施することが多いです。フロントエンドエンジニアより緊急対応や夜間対応を求められる可能性が高いため、「つらい」と思うこともあるかもしれません。
フロントエンドとバックエンドのそれぞれに向いている人
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアのそれぞれに向いている人を紹介します。
フロントエンドエンジニアに向いている人
フロントエンドエンジニアに向いている人は、以下のような適性を持つ人です。
- コミュニケーション能力がある
- デザインに興味がある
- ユーザーに使われると、仕事のやりがいを感じる
フロントエンドエンジニアは、ユーザーが見える部分を開発するため、クライアントから直接要望を聞く機会が多くあります。クライアントの要望を丁寧に聞き取るコミュニケーション能力が求められるでしょう。
また、Webデザイナーと連携しながらデザインの実装(コーディング)を行います。その際、文字のサイズやフォントまで細かく指定されるケースもあったり、コミュニケーションする上でデザインに興味がある・好きな人の方が向いています。
フロントエンドはユーザーが使う部分であるため、「自分が担当した画面をお客様に使ってもらっている」という実感を得やすいでしょう。「ユーザーが触れる部分を開発したい」「自分が開発した画面やアプリが実際に使われているのを見ると、やりがいを感じる」という方は、フロントエンドエンジニアが向いているかもしれません。
バックエンドエンジニアに向いている人
バックエンドエンジニアに向いている人は、以下のような適性を持つ人です。
- 論理的思考が得意な人
- 細かいミスに気づける人
バックエンドの開発はフロントエンドと違って、見た目やデザイン性にこだわる機会は滅多にありません。
バックエンドエンジニアに特に求められるのは、論理的思考能力です。処理の抜け漏れや想定外の動作がないように論理的に詳細設計・実装をしていく必要があります。
また、システム開発案件では、どんなに頑張っても何らかのエラーや想定外の動作に出くわすケースが多くあります。バックエンドエンジニアは、いま起きている不具合・エラー内容から原因を想定・切り分けするトラブルシューティング力、細かいミスに気が付ける必要があります。
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアの年収
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアの平均年収は約400万円前後です。
マイナビエージェントの調査によると、フロントエンドエンジニアは年収約385万円、バックエンドエンジニアは450万円前後(SE・プログラマー443万円/サーバーエンジニア465万円)です。バックエンドエンジニアのほうがやや年収が高い傾向があります。
経験年数や保有スキルによっても大きく異なり、役職によっては1000万円以上の年収の会社もあります。
まとめ
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアの違いについて紹介しました。
それぞれに必要なスキルや担当範囲の違いがあります。また、プロジェクトによっても求められるスキルが異なります。
フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアは、いずれもIT業界に欠かせない仕事です。IT業界への就職を検討している方は、自分の適性に照らし合わせて検討してみてください。
フロントエンジニアやバックエンドエンジニアに転職希望のある方は、転職エージェントを利用してみるとよいでしょう。
一口に転職エージェントと言っても、20代・IT未経験か、IT経験者か、30代以降かで選択するべき転職エージェントは変わりますので、IT業界へ転職したい方は参考にしてみてください。
詳しくは「IT・エンジニアおすすめ転職エージェント比較・一覧【総まとめ版】」をご参照ください。
今回は以上になります。最後までご覧いただきありがとうございました。