これから転職を考えているエンジニアの中には、ベンチャー企業に行くべきか大手企業に行くべきか漠然と迷っている人も多いのではないでしょうか。
大手IT企業とITベンチャー企業はいずれもIT関連業務を扱っていますが、大手IT企業は福利厚生が充実して安定している会社が多く、ITベンチャー企業は物事の決定スピードが速くて自己成長しやすい会社と、傾向が異なります。
転職する際は、自分がどちらに向いているかを検討することが大切です。
この記事では、大手IT企業とITベンチャー企業のメリットやデメリットを紹介します。それぞれに特徴があるため、自分がどちらに合っているか確認してみてください。
大手企業 | ベンチャー企業 | |
---|---|---|
メリット | 会社として安定している 福利厚生が充実している 企業自体が信頼されている | 一人一人の裁量権が多く、物事の決定スピードが速い 成果主義で成果が報酬に反映されやすい プロジェクト全体を俯瞰できる |
デメリット | 調整ごとに時間が取られて決定に時間がかかる 分業化されていてプロジェクトの一部しか関われない 勤務地や職種を選べない場合がある | 会社として安定していない 激務になりやすい 実力不足だと給与アップや昇進が難しい |
大手IT企業とITベンチャー企業の特徴と違い
大手IT企業は、IT関連業務を扱う大手企業のことです。世間に名の知られた企業であるためにネームバリューがあり、安定している会社が多くあります。以下は大手IT企業です。日立〇〇やNEC〇〇のように関連企業もたくさんあります。
- NTTデータ
- 日立製作所
- NEC
- 富士通
一方ITベンチャー企業とは、IT技術を武器に成長を目指す若い企業です。成果主義であることが多く、仕事のスピード感があるのがITベンチャー企業の特徴です。
以下は、有名な(元)ベンチャー企業です。現在は上場などして既に大手企業に類する位置付けですが、今社会人の方は、ベンチャー企業として急成長してきたところを間近に感じてきたのではないでしょうか。
- メルカリ
- 楽天グループ
- ラクスル
- DeNA
大手IT企業に転職・働いた時のメリット
ここからは、大手IT企業に転職・働く時のメリットについてご紹介します。
■大手IT企業に転職・働くメリット
- 会社として安定している
- 福利厚生が充実している
- 企業自体が信頼されている
会社として安定している
大手IT企業でも経営難に陥っているところはあるものの、基本的には倒産の心配が少なく安心して働けるというのが大手IT企業の魅力でしょう。
「会社が10年続く確率は数%」と言われるように、会社を長く存続させるのは簡単なことではありません。しかし、日本の大手のIT企業に入社したら「定年までは大丈夫だろう」と思える会社が多いです。
仮に会社が大きな損失を受けたとしても、企業側から従業員を辞めさせることはできません。赤字になっても何とか最低限の給与を支払い、働く場所を用意してくれるのが大手IT企業の強みです。
福利厚生が充実している
大手IT企業は福利厚生が充実しているというメリットがあります。
大手であれば、例えば育休・産休の制度や退職金の制度を用意しているところがほとんどでしょう。企業によっては住宅手当やリフレッシュ休暇、保養所や持ち株制度など、さまざまな福利厚生があります。
大手企業は長年多くの社員を抱えてきただけあって、社員の満足度を見ながら制度を充実させる傾向があります。大手企業の社員になると、福利厚生を活かして住宅費や引っ越し費用、自己学習に関する費用を抑えられる可能性があるでしょう。
企業自体が信頼されている
大手企業は世間からの信頼が厚い傾向があります。そのため、大手企業の信頼度や知名度を活かせる場面があるかもしれません。
例えばクライアントに提案活動を行うとき、名前を知らない企業よりは有名な企業のほうが一定の信頼があり、クライアントからの安心感を得られる可能性が高くなります。もちろん「有名な企業だから提案が通る」とは限りませんが、企業のネームバリューのおかげで一定の信頼感は得られるでしょう。
また、大手企業で勤務した経験を転職活動に活かせる場合もあります。「有名な企業で働いた実績がある」ということ自体に価値を感じてもらえ、採用につながりやすくなる可能性もあります。
ネームバリューのある企業に勤めていると、結婚や婚活などプライベートな活動でも役に立つこともあるかもしれません。
大手IT企業で働くデメリット
つぎに、大手IT企業で働く場合のデメリットを解説します。
■大手IT企業に転職・働くデメリット
- 調整ごとに時間が取られて決定に時間がかかる
- 分業化されていてプロジェクトの一部しか関われない
- 勤務地や職種を選べない場合がある
調整ごとに時間が取られて決定に時間がかかる
大手企業では、何かを決定するにあたって時間がかかる傾向があります。
具体的には何かを進めるのに、人や部署への調整ごとや、本当に必要なのか疑問に思うような書類作成に時間が取られることもあるでしょう。
また、ルールや部署が多数あるため、1つの決定事項に対して「まずは直属の上司の承認を得て、さらにその上の上司の承認を得て、担当部門の承認を得て…」と承認プロセスが多数あるケースが多いです。
決裁や承認が降りるまでの調整ごとに時間がたくさんとられて、不満に感じることもあるかもしれません。
分業化されていてプロジェクトの一部しか関われない
大手IT企業で働くと、分業化されているためプロジェクトの一部しか関われないというデメリットがあります。
大手IT企業が担当するプロジェクトは、規模が大きいものがほとんどです。そのため、自分のチームだけで完結してプロジェクトを進めるということはあまりありません。自社の中の他部署や協力会社・他ベンダーなど、多くの会社が関わって1つのシステムを作り上げることが多いでしょう。
会社や部署によっては仕事内容が完全に分業化されていて、一人でいろいろチャレンジしたいのに、一部分しか関われないということもあります。
規模が大きいプロジェクトに関われるのは大手IT企業の強みである一方で、規模が大きいということは全体の一部分しか携われないという意味でもあります。
勤務地や職種を選べない場合がある
大手IT企業は勤務地や職種を多数用意されていることが多いです。自分の希望が叶うとは限らないため、転勤することになったり、希望以外の職種に就いたりすることもありえるでしょう。
企業側よっては「多くのプロジェクトや仕事を経験してほしい」という想いを持っていて、現場や異動のローテーションを積極的に行う場合があります。ITベンチャー企業は規模が小さいため勤務地が限られますが、大手企業は選択肢が多いゆえに「行きたくない場所や現場で働くことになる」という可能性もゼロではありません。
大手IT企業の転職ならこんな人がおすすめ
大手IT企業に向いている人は、以下のような人です。
職場に安定を求める人
大手IT企業の大きな魅力は「安定」です。安定した職場に勤めたいという人は大手企業への転職を考えるとよいでしょう。「やりがいや仕事の内容は二の次でいい」「定年までじっくり働ける会社がいい」という場合は、大手IT企業をおすすめします。
ネームバリューのある会社で働きたい人
大手IT企業に勤めると、ネームバリューのある会社の従業員であることを活かせます。「将来的な転職活動に活かしたい」「大きい会社の一員として社会に貢献したい」という方は、大手IT企業が向いているでしょう。
福利厚生が充実した会社で働きたい人
大手IT企業は福利厚生が充実している会社が多いです。退職金や育休・年休など、福利厚生面も重視したい方は大手IT企業に勤めるのがおすすめです。
ITベンチャー企業に転職・働いた時のメリット
つぎにITベンチャー企業で働く場合のメリットについてみていきましょう。
■大手IT企業に転職・働くメリット
- 一人一人の裁量権が多く、物事の決定スピードが速い
- 成果主義で成果が報酬に反映されやすい
- プロジェクト全体を俯瞰できる
一人一人の裁量権が大きく、物事の決定スピードが速い
ITベンチャー企業は従業員が少なく、ルールも大手企業に比べるとシンプルであることが多いです。
そのため、一人一人の裁量権が大きく、1つの決定事項に対して多くの上司の承認を得る必要はありません。
少ない人数で物事を決定できたり、社長との距離が近かったりするのがITベンチャー企業の特徴です。自分で物事を決められるやりがいを感じやすいといえるでしょう。
成果主義で成果が報酬に反映されやすい
ITベンチャー企業は、成果が報酬に反映されやすいという特徴があります。
大手IT企業は給与形態が細かく定められており、成果を出した分給与に反映されるということがあまり多くありません。もちろん大手IT企業でもボーナスに反映されることはありますが、ITベンチャー企業の場合は成果を上げれば上げるほどインセンティブとして給与に反映される制度になっているところが多い傾向があります。
仕事を頑張った分だけ給与に反映される制度であれば、仕事へのモチベーションも維持しやすくなるでしょう。
プロジェクト全体を俯瞰できる
ITベンチャー企業は、大手IT企業と比べると小さなプロジェクトを担当するケースが多くあります。
プロジェクトの規模が小さいというのは一見デメリットに見えるかもしれませんが、規模が小さければプロジェクト全体を俯瞰できます。規模によっては、自社数名だけで対応するケースもあるでしょう。
プロジェクトの規模が大きくなればなるほど関わる人が増えて分業制になるため、「システム全体を俯瞰的に見て、すべての工程に関わりたい」といった方は、ITベンチャー企業が向いているかもしれません。
ITベンチャー業で働くデメリット
ここでは、ITベンチャー企業で働く場合のデメリットを解説します。
■大手IT企業に転職・働くデメリット
- 会社として安定していない
- 激務になりやすい
- 実力不足だと給与アップや昇進が難しい
会社として安定していない
ITベンチャー企業は、大手IT企業に比べると安定していません。これは事業・経営的な部分もありますし、仕事のノウハウ的な部分もあります。会社が長く続いているということはそれだけ経営や組織運営のノウハウが蓄積されているという証拠であります。
ITベンチャー企業はまだ会社としての歴も短いため、プロジェクトの進め方や品質管理のノウハウが確立されておらずかなり属人的になっているところも多く、大手のように教育体制も整っていないかもしれません。
また大手IT企業であれば、大きな事業の失敗があったとしても他の事業で得た利益やこれまでの資産があるため、「従業員の給料が払えなくなる」ということはまずないでしょう。しかし、ITベンチャー企業では、最悪の場合倒産する可能性も考えられます。
激務になりやすい
ITベンチャー企業は若い企業ゆえに、制度が整っていない部分もあります。大手IT企業ほど残業に関する規制が整理されていないために、長時間残業が普通となってしまうことも考えられるでしょう。
また、自社の人手が足りないとき、大手IT企業であれば他部署からの支援を調整できます。しかしITベンチャー企業は従業員が少ないため、仕事量が増えても今いるメンバーだけで何とかしなければならないケースが多く、1人あたりの負荷がかかりやすいという特徴があります。
成果不足だと給与アップや昇進も難しい
ITベンチャー企業は、よくも悪くも実力主義の会社が多いです。成果を出せば給与アップや昇進につながりますが、成果を残せなければそれらは見込めないでしょう。
大手IT企業の中には、年功序列の文化を持つところがあります。勤続年数に応じて給与が上がる会社もあるため、たとえ成果を出せていなくてもある程度の給与やボーナスを得られる可能性があります。
一方ITベンチャー企業では、成果を認められなければ給与アップや昇進が難しいというのがデメリットです。
ITベンチャー企業の転職ならこんな人がおすすめ
ITベンチャー企業に向いている人は、以下のような人です。
成長機会がほしい
ITベンチャー企業は大手IT企業よりも裁量権が大きく広範囲の仕事に関わる傾向があります。スピード感のある現場が多く、若いうちから様々なことを任せられるため、「成長の機会がほしい」「将来起業も考えている」という人にはITベンチャー企業が向いているでしょう。
早く出世したい
ITベンチャー企業は大手IT企業ほど年功序列を採用しておらず、実力がある人が昇進できる傾向があります。「早く出世したい」と思う人は、ITベンチャー企業に進むのもひとつの案です。
将来独立できるスキルがほしい
ITベンチャー企業は、大手企業のように書類作成や部署間の調整ごとばかりに時間を取られるといったことは少なく、開発作業をはじめとした実務面に注力できる側面もあります。
また、一人ひとりの活動の幅が多いので、営業関連の仕事で人脈を築いたり、マネジメントなど経験したりして、自然と将来独立するためのスキルが身に付きやすくなります。そのため、将来独立を考えている人は、ITベンチャー企業に入るのもよいでしょう。
まとめ
まとめです。今回は大手IT企業とITベンチャー企業の特徴を解説しました。
それぞれにメリット・デメリットがあり、向いている人の特徴も異なります。転職の際は、自分がどちらに向いているかを検討するようにしましょう。
大手企業 | ベンチャー企業 | |
---|---|---|
メリット | 会社として安定している 福利厚生が充実している 企業自体が信頼されている | 一人一人の裁量権が多く、物事の決定スピードが速い 成果主義で成果が報酬に反映されやすい プロジェクト全体を俯瞰できる |
デメリット | 調整ごとに時間が取られて決定に時間がかかる 分業化されていてプロジェクトの一部しか関われない 勤務地や職種を選べない場合がある | 会社として安定していない 激務になりやすい 実力不足だと給与アップや昇進が難しい |
なお、初め転職する方はまず転職エージェントを利用してみるとよいでしょう。
転職エージェントでは、キャリアカウンセラーがあなたが大手IT企業やベンチャーのどちらが向いているか、ヒアリングして自己分析なども支援してくれます。
転職エージェントの一覧については詳しくは「IT・エンジニアおすすめ転職エージェント比較・一覧【総まとめ版】」をご参照ください。
今回は以上になります。最後までご覧いただきありがとうございました。