IT業界で就職活動や転職活動をしていると、「SIer系企業」「Web系企業」という言葉を聞くことがあるかもしれません。
SIer系企業は他社から依頼を受けてシステムを構築する企業、Web系企業はWebサービスを提供する企業です。SIer系企業とWeb系企業はいずれもIT業界の仕事ですが、求められるスキルや主な開発方法、職種の呼び方などが異なります。
この記事では、SIer系企業とWeb系企業の違いや向いている人の特徴を説明しています。それぞれの違いを知りたい方は、最後まで読んでみてください。
SIer企業とWeb系企業の違い
SIer(エスアイヤー)は、システムインテグレータ(Systems Integrator)の略です。SIer系企業は顧客から依頼を受けて顧客システムを構築するIT企業です。顧客は金融機関や官公庁、教育機関などいわゆるB to Bの領域が多いです。
一方、Web系企業は、主に自社のWebサービスを提供する企業です。アメブロのようなブログサービス、Lineのようなスマホアプリなど、SIer企業が構築したシステムと比較すると、顧客は一般消費者向け(B to C)であることが多いです。
一般的にSIer系企業の方がWeb系企業より若干年収が高い傾向があります。SIer系企業に比べてWeb系企業はスタートアップ系の企業が多く年齢も若い人が多いため、平均するとWeb系企業の方が若干年収が低い傾向があります。
なお、年収については企業によるところがかなり大きいので、年収を特に重要視する方は四季報などで企業ごとの年収を調べて検討した方が確実です。
ここからはSIer系企業とWeb系企業のそれぞれについてもう少し詳しく説明していきます。
SIer系企業とは
SIer(エスアイヤー)は、システムインテグレータ(Systems Integrator)の略です。SIer系企業は他社から依頼を受け、その要望にあわせてシステムを構築するIT企業です。
顧客は金融機関や官公庁、教育機関などさまざまな領域にわたります。いわゆる、B to B(企業対企業)の取引が主になります。
代表的なSIer系企業
SIer系の代表的な企業には以下のようなものがあります。
- 日立製作所
- NEC
- 富士通
- 野村総合研究所
- NTTデータ
- SCSK
SIer系企業は、しばしば「メーカー系SIer」や「ユーザー系SIer」、「独立系SIer」などさらに細分化されて呼ばれる場合があります。
例えば富士通はメーカー系SIerに分類されます。どちらかというと、世間一般では、サーバーやネットワーク機器などのハードウェアを製造するメーカーとして有名ですが、企業向けシステムを構築するSIerの役割も大きな事業領域となっています。
SIer系企業の主な職種
SIer系企業の代表的な職種としては、それぞれ以下のような職種があります。
- システムエンジニア
- インフラエンジニア
- プログラマー
- プロジェクトリーダー・プロジェクトマネージャー
- ITコンサルタント
- 営業・セールス・セールスエンジニア
- カスタマーエンジニア
- ヘルプデスク・カスタマーサポート
SIer系企業では、プログラマーやSEの一担当者としてプロジェクトに参画し、プログラミングやテスト作業から始めるのが一般的です。一定の経験を経て、チームリーダーやマネージャーにステップアップすることが多いでしょう。
IT系の主な職種については下記の記事も併せてご覧ください。
Web系企業とは
Web系企業は、自社Webサービスを開発・リリースして顧客に提供する企業です。
メルカリのようなフリマサービスや、アメブロのようなブログサービス、Lineのようなスマホアプリなど、SIer企業が構築したシステムと比較すると、顧客は一般消費者向けであることが多いです。いわゆるB to C(企業対一般消費者)の取引が主になります。
代表的なWeb系企業
Web系の代表的な企業には以下のようなものがあります。
- サイバーエージェント
- カカクコム
- メルカリ
- ヤフー
- LINE
- ディー・エヌ・エー
今回、ご紹介した企業は大企業ですので、SIerやWeb領域以外にもいろいろな事業がありますが、日本を代表する有名な企業ですのでイメージはつきやすいのではないでしょうか。
Web系企業の主な職種
Web系企業の代表的な職種としては、それぞれ以下のような職種があります。SIer企業の職種と同じような役割の職種も多いですが、呼ばれ方が違う場合もよくあります。
- プロダクトマネージャー
- 営業・セールス・セールスエンジニア
- インフラエンジニア
- デジタルマーケティング
- Webデザイナー
- Webエンジニア(Webプログラマー)
- Webプランナー/Webディレクター
- Webマーケッター
- ヘルプデスク・カスタマーサポート
職種にもよりますが、プログラミングやデザインなど、Webに関するさまざまなスキルを身に付けていきながら、スペシャリストまたは組織のマネージャーにステップアップしていくことが多いでしょう。
それぞれで求められるスキル
ここからは、SIer企業とWeb系企業のIT技術職(エンジニア系)でそれぞれ求められるスキルについて説明していきます。
企業や配属先によって求められるスキルは違う場合もありますのであくまで全体的な傾向としてご参考下さい。
SIer系企業で求められるスキル
SIer系企業のシステムエンジニア職では、主に以下のようなスキルを求められます。
- プログラミングの知識
- サーバー・ネットワーク系の知識
- マネジメントスキル(調整事・進捗管理・課題管理を含む)
- 顧客の業務知識
Web系でもSIer系の企業でもエンジニア系の職であればどちらもITスキルやプログラミング知識が必要なのは共通ですが、大きな違いとしてはSIer企業のエンジニアは、顧客の業務や顧客要望を正しく理解してシステムに落とし込む力が求められます。
たとえば、導入先の顧客の業務改善システムを導入する場合、基本的な業界用語はもちろんのこと、業務の流れや現状の業務課題などを正しく理解しなければ、そもそも顧客の要望を満たすシステムを要件定義することは難しいでしょう。
また、SIer企業のエンジニアは直接プログラミングをしない場合も多いですが、要件調整や設計を行う段階で「プログラミングで実装できる機能か」といった目途をつける必要があるため、基本的なプログラミングスキルも求められます。
加えて、顧客の社内ネットワーク環境下でシステムを導入したり、顧客の既存システム(たとえば人事データベース)とのシステム連携することも多いため、顧客の既存システム環境や注意制限事項などを正しく把握しておくことも重要です。
SIer企業のシステムエンジニアは、プログラミング・サーバー・ネットワークをはじめとした基本のITスキルだけでなく、顧客の業務知識や、顧客やチームメンバーとの調整・品質管理などのマネジメントスキルなど幅広いスキルが求められます。
Web系企業で求められるスキル
Web系企業と一言でいっても、Webデザイナーやプログラマー、インフラエンジニアなどさまざまな職種があります。職種によって求められるスキルは異なりますが、以下のようなスキルがあるとよいでしょう。
- プログラミングスキル
- デザインスキル
- スピーディーな対応力
- 自社サービス・プロダクトの理解
WebデザイナーやWebエンジニアであれば、Adobe系のソフト(illustratorやPhotoshop、XDなど)や、HTMLやCSS、Javascriptなどを扱えるスキルが必要です。
またWebエンジニア/プログラマーが利用するプログラミング言語は、SIer系企業がJavaやC#などの言語を扱うことが多いのに対して、Web系企業はPHPやRuby、Pythonなどを使用することが多い傾向があります。
また、Web系企業はスタートアップ系企業も多く、自社サービス・自社プロダクト開発が主となるため、顧客と調整しながら順を追って進めるSIer系企業に比べて、意思決定のスピードが速い傾向があります。
自社サービス・プロダクトの仕組みや仕様を理解しつつ、仕様変更や機能拡張、試行錯誤などをスピード感を持って進められる力が求められます。
よく使われる開発手法
SIer系企業は主にウォーターフォールモデルがよく使われる手法なのに対して、Web系企業はアジャイル開発という手法がよく用いられます。
ウォーターフォールモデル
SIer系企業は、古くからよく使われているウォーターフォールモデルという開発手法を使うことが多くあります。
ウォーターフォール型では、以下の工程を順に進めていきます。
流れ | 工程概要 |
要件定義 | 顧客からシステムの要件を聞き、システム化の範囲を定義する。 |
設計 | 要件定義の内容を具体化し、設計書を作成する。 |
開発 | 設計書をもとに、プログラミングを行う。 |
テスト | プログラムの動作をテストする。 |
運用 | システム稼働後に正常に動くようサポート・修正を行う。 |
ウォーターフォール型は、初めに要件定義をきっちり決めたのち、設計や開発に進みます。
ウォーターフォール型では対応する要件を全て順番に対応します。ウォーターフォール型では、同プロジェクト内で「テスト工程に入ってから設計に戻る」といったことは基本的にありません。
SIer系の場合、大手企業や官公庁などの大きいシステムを担当することが多かったり、対象が顧客システムという都合上、予算や調整ごとの問題などの制約が大きいため、初めに要件や仕様を固めて、その通りに作っていくということが多いです。
アジャイル開発
Web系では、SIer系企業と同様ウォーターフォール型を採用しているところもあれば、アジャイル開発といって短いスパンでリリースを繰り返す開発手法を採用しているところもあります。
アジャイルとは直訳すると「機敏な,俊敏な」という意味です。
実現したいことを整理・優先順位をつけた上で、小さい単位で「計画→設計→開発→テスト」を何回も繰り返しながら、段階的にシステムをリリース・拡張していく手法です。
流れ | 工程概要 |
ユーザーストーリー | 利用者が実現したいことを簡潔に整理する(ウォーターフォールモデルにおける要件定義) |
リリース計画 | 実現したい機能の優先順位を決めて、リリースの計画を行う |
イテレーション(スプリント) | 「計画→設計→開発→テスト」の流れを小さく反復して、顧客のフィードバックを受けながら、システムをリリース・拡張する。 |
「計画→設計→開発→テスト」の流れはウォーターフォール型と似ていますが、優先順位を付けて少ない機能数で対応し、リリース回数が多いのがアジャイル開発の特徴です。
SIer系企業と違ってWeb系の自社サービス開発の場合は、意思決定のスピードが速く、試行錯誤しながら改善・機能拡張という手法が取りやすいため、アジャイル開発をしやすい面もあります。
SIer系企業・Web系企業に向いている人
ここでは、SIer系企業、Web系企業それぞれに向いている人の特徴を説明します。
SIer系企業に向いている人
SIer企業は、大手企業や自治体、官公庁などの大規模なシステム開発を経験できるチャンスがあります。要求仕様の決まった大きいシステムを開発するも多いため、長期間スケジュールに沿って抜け漏れなく進行していくことが求められます。
ただし、実際には何らかの予期せぬ問題は大なり小なり起こるため、そういった問題に対するリスク管理や顧客調整、社内調整も必要になってきます。
システムエンジニアは、プログラミング以外にも、上記のようなマネジメントや進捗管理、品質管理をメインで行うことも多いです。逆にいうと、そういった調整ごとや進捗管理が苦手だとあまり向いていないかもしれません。
また、「顧客の業務を理解して、顧客の業務をシステムで改善する」といったことが好きな人や、将来的にそういった企業向けのITコンサルをやってみたい人も向いているといえます。
Web系企業に向いている人
Web系企業は、どちらかというとフットワークが軽い人が向いています。
Web系企業はSIer系企業に比べて、短期間で次々に新しい機能をリリースする作業が多いです。また、Web系企業は変化やトレンドを求められる傾向があります。
SIer系企業に比べると分業化されていない企業も多いので自分の専門外の技術分野や、短期間での仕様変更・機能拡張・試行錯誤などのスピード感のある仕事に対応しながら楽しめる、フットワークが軽い人の方が向いているでしょう。
また、Web系企業では、自社Webサービス・プロダクトの開発がメインの仕事になります。
プログラミングをしたり、デザインを作成したりしながら、自社サービスや自社プロダクトを一緒に育てていけることが楽しいと思える方は、Web系企業の方があうかもしれません。
また個人的な印象としては、SIer系企業の方が基本スーツを着ていて真面目・年功序列な感じのところが多く、Web系企業の方が私服が多く今どきな・成果主義な感じの会社が多い傾向があると感じていました。
もちろん企業にもよりますが、自分がどっちが好きかも考えてみてくださいね。
まとめ
SIer系企業とWeb系企業の違いを説明しました。いずれもIT業界において重要な仕事ですが、仕事内容や求められるスキルが異なります。ご自身の適性に合わせて、興味がある仕事を探してみてください。
SIer系企業やWeb系企業に転職希望のある方は、転職エージェントを利用してみるとよいでしょう。
一口に転職エージェントと言っても、20代・IT未経験か、IT経験者か、30代以降かで選択するべき転職エージェントは変わりますので、IT業界へ転職したい方は参考にしてみてください。
詳しくは「IT・エンジニアおすすめ転職エージェント比較・一覧【総まとめ版】」をご参照ください。
今回は以上になります。最後までご覧いただきありがとうございました。